えているのは一首も無い。けれども此処《ここ》の旋頭歌も、巻十一巻頭の旋頭歌も人麿歌集に出づというのであるから、人麿はこの形態の歌をも作ったのかも知れず、技法はなかなかの力量を思わしめるものである。併し内容は殆ど民謡的恋愛歌だから、そういう種類の古歌謡を人麿が整理したのだとも考えることが出来る。
 この一首は、この長閑《のどか》な春の日ですら、お前は田に働いて疲れる、妻のいない一人ぽっちの、お前は田に働いて疲れる、というので、民謡でも労働歌というのに類し、旋頭歌だから、上の句と、下の句とどちらから歌ってもかまわないのである。「君がため手力《たぢから》疲れ織りたる衣《きぬ》ぞ、春さらばいかなる色に摺《す》りてば好《よ》けむ」(巻七・一二八一)なども、女の気持であるが、やはり労働歌で、機《はた》織りながらうたう女の歌の気持である。

           ○

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冬《ふゆ》ごもり春《はる》の大野《おほぬ》を焼《や》く人《ひと》は焼《や》き足《た》らねかも吾《わ》が情《こころ》熾《や》く 〔巻七・一三三六〕 作者不詳
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 譬喩歌《ひゆか》で、「草に
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