う。この歌で、「一目見し」に家持は興味を持っている如くであるが、「一目見し人に恋ふらく天霧《あまぎ》らし零《ふ》り来る雪の消《け》ぬべく念ほゆ」(巻十・二三四〇)、「花ぐはし葦垣《あしがき》越《ご》しにただ一目相見し児ゆゑ千たび歎きつ」(巻十一・二五六五)等の例が若干ある。家持の歌は、斯く美しく、覚官的でもあるが、彼の歌には、なお、「なでしこが花見る毎に処女らが笑《ゑま》ひのにほひ思ほゆるかも」(巻十八・四一一四)、「秋風に靡《なび》く川びの柔草《にこぐさ》のにこよかにしも思ほゆるかも」(巻二十・四三〇九)の如き歌をも作っている。「笑《ゑま》ひのにほひ」は青年の体に即《つ》いた語でなかなか旨《うま》いところがある。併し此等の歌を以て、万葉最上級の歌と伍《ご》せしめるのはいかがとも思うが、万葉鑑賞にはこういう歌をもまた通過せねばならぬのである。
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御民《みたみ》われ生《い》ける験《しるし》あり天地《あめつち》の栄《さか》ゆる時《とき》に遇《あ》へらく念《おも》へば 〔巻六・九九六〕 海犬養岡麿
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天平《てんぴょ
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