れたものである。(檜嬬手《ひのつまで》も全く略解の説を踏襲している。)
○
[#ここから5字下げ]
旅《たび》にしてもの恋《こほ》しきに山下《やました》の赤《あけ》のそほ船《ぶね》沖《おき》に榜《こ》ぐ見《み》ゆ 〔巻三・二七〇〕 高市黒人
[#ここで字下げ終わり]
高市連黒人《たけちのむらじくろひと》の※[#「覊」の「馬」に代えて「奇」、第4水準2−88−38]旅八首中の一つである。この歌の、「山下《やました》の」は、「秋山の下《した》ぶる妹」(巻二・二一七)などの如く、紅葉の美しいのに関係せしめて使って居るから、「赤」の枕詞に用いたものらしい。「そほ」は赭土《しゃど》から取った塗料で、赭土といっても、赤土、鉄分を含んだ泥土、粗製の朱等いろいろであった。その精品を真朱《まそほ》といって、「仏つくる真朱《まそほ》足らずは」(巻十六・三八四一)の例がある。「赤のそほ船」は赤く塗った船である。「沖ゆくや赤羅《あから》小船」(同・三八六八)も赤く塗った船のことである。そこで一首の意味は、旅中にあれば何につけ都が恋しいのに、沖の方を見れば赤く塗った船が通って行く、あ
前へ
次へ
全531ページ中172ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング