》めて短歌だけにしたから、万葉の短歌が四千二百足らずあるとして大体一割ぐらい選んだことになろうか。
本書はそのような標準にしたが、これは国民全般が万葉集の短歌として是非知って居らねばならぬものを出来るだけ選んだためであって、万人向きという意図はおのずから其処《そこ》に実行せられているわけである。ゆえに専門家的に漸《ようや》く標準を高めて行き、読者諸氏は本書から自由に三百首選二百首選一百首選|乃至《ないし》五十首選をも作ることが出来る。それだけの余裕を私は本書のなかに保留して置いた。
そうして選んだ歌に簡単な評釈を加えたが、本書の目的は秀歌の選出にあり、歌が主で注釈が従、評釈は読者諸氏の参考、鑑賞の助手の役目に過ぎないものであって、而《しか》して今は専門学者の高級にして精到な注釈書が幾つも出来ているから、私の評釈の不備な点は其等《それら》から自由に補充することが出来る。
右のごとく歌そのものが主眼、評釈はその従属ということにして、一首一首が大切なのだから飽くまで一首一首に執着して、若し大体の意味が呑込《のみこ》めたら、しばらく私の評釈の文から離れ歌自身について反復熟読せられよ。読者
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