ゐたやうなことを歌つてゐるが、此は過去を追懐して恋愛初期の事を咏んだ、作歌の一つの手段であつたのかも知れない。
(二)[#「(二)」は縦中横] 羽易娘子。 長歌の第二に、『現身《うつせみ》と念ひし時に取持ちて吾が二人《ふたり》見し』云々、『恋ふれども逢ふよしをなみ大鳥の羽易《はがひ》の山に』云々とあつて、羽易の山に葬つた趣の歌であるから、これも人麿考の著者に傚つて仮にかう名づけた。この長歌には、『吾妹子が形見に置ける若《わか》き児《こ》の乞ひ泣く毎に』云々とあつて、幼児を残して死んだやうに出来てゐる。それだから、この羽易娘子と軽娘子は別々な人麿の妻だと考へてゐる論者が多い。けれども、人麿が長歌を二様に作り、第一の長歌では遠い過去のこと、第二は比較的近事のことを咏んだとせば解釈がつくので、此は同一人だと考へても差支ないと思ふ[#「此は同一人だと考へても差支ないと思ふ」に傍点]。
(三)[#「(三)」は縦中横] 第二羽易娘子。 第三の長歌(或本歌曰)は第二の長歌と内容が似て居り、『吾妹子が形見に置ける緑児《みどりご》の乞ひ哭《な》く毎に』と云つて幼児の事を咏んでゐるが、違ふ点[#「違ふ
前へ
次へ
全15ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング