ナラ漬。佃煮。梨一ツ。葡萄四房。間食。牛乳五合ココア入。ココア湯。菓子パン小十数個。塩センベイ一、二枚。夕。焼|鰮《いわし》四尾。粥三ワン。フヂ豆。佃煮。ナラ漬。飴二切。巴里《パリ》浅井氏ヨリ上ノ如キ手紙来ル。
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 こう書いてあって、そのうえの方にワットマン紙の水彩絵ハガキが張りつけてある。川の水が緩く流れていて、黒い色の目金橋《めがねばし》が架かっている。その橋が水に映っているところである。その向うに翠《みどり》の濃い山が見えて、左手には何かポプラアのような木が五、六本かいてある。その余白に「ほととぎす著。昨日虚子君の消息を読み泣きました。この画はグレーといふ田舎の景色なり御病床の御慰みまで差上候。木魚生」とあり、それから「只今は帰りがけに巴里によりて遊居候その内に帰朝致|久振《ひさしぶり》にて御伺申すべく存候御左右その後いかが被為《なされ》入候|哉《や》。三十四年八月十八|呉《くれ》秀三」とあり、その他に和田英作|満谷国四郎《みつたにくにしろう》氏も通信している。正岡先生はこの絵ハガキを『仰臥漫録』と簽《せん》した帳面に張りつけて朝な夕なにながめておられたの
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