結核症
斎藤茂吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)歿《ぼつ》した
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)高山|樗牛《ちよぎう》
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おなじ結核性の病で歿《ぼつ》した近ごろの文学者でも、やはり行き方に違ふところがあるやうに思ふ。正岡子規とか国木田独歩とかを一つの型《かた》と看做《みな》せば、高山|樗牛《ちよぎう》とか綱島梁川《つなしまりやうせん》とかは又一つの型のやうに思はれる。
総じて結核性の病に罹《かか》ると神経が雋鋭《しゆんえい》になつて来て、健康な人の目に見えないところも見えて来る。末期になると、病に平気になり、呑気《のんき》になり、将来に向つていろいろの計画などを立てるやうになるが、依然として鋭い神経を持つてゐる。それであるから、健康の人が平気でやつてゐることに強い『厭味』を感じたり、細かい『あら』が見えたりする。
正岡子規なんかは、三十六歳の若さで死んでゐるが、やはりその『厭味』といふことが強く身に答へたものらしい。現在の私はもう子規よりも十年生きのびてゐるが、いかにしても子規よりも甘いところがあり、厭味から脱することが
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