緑蔭叢書創刊期
蒲原有明
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](明治四十二年)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)藤村君はその後いよ/\坐りつづけて
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藤村君のこれまでの文壇的生涯を時代わけにして、みんなが分擔して書きたいことを書きとめておくのもよい企である。わたくしには「若菜集」の出るやうになつた頃のことを書かぬかどうかといふ相談があつた。しかし藤村君とのつきあひは「夏草」出版直後からであるから、若菜集時代、即ち文學界末期頃とは全く無關係であつた。さういふわけから、それでは大久保時代をとの注文が出た。
さてその大久保時代を引うけて書くだんになると、その時期が短かかつただけに、格別これはといふ材料がない。その大久保時代にしても、ざつと今より二昔前のことである。ことに健忘なわたくしのことゆゑ記憶がかすんでゐる。止むをえず古い手筐をひきあけて調べてみたが、その時分のものでは葉書が二三枚出たまでゝあつた。五六年もつづいた小諸期のものならば長文の書簡がいく
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