れずに大事な時を無為に過してしまった。かれは既に老衰に及んで、よろよろしている。盲人ならぬ目開《めあ》きがかえって目を開けずにうろうろうろついている。そう思ってくるとまた考えずにはいられない。その上に更に考えようのないことを考えてみても解決はつかない。過去は悔《くや》まぬこと――かれは平生からそれだけの心構えはしていた。その根本さえ立てておけば好い。そう思ってみてもかれはやはり弱かった。自分の考に考え呆《ほう》けて、その挙句《あげく》ぼんやりする。
一旦古い説話に出てくる盲人の活手段を身に引き当てて蘇生のおもいをしたものの、それもその当座だけで、そのあとで鶴見はまた一層の疲労をおぼえた。実はこの一カ月ばかり前から、どういうものか、たあいもなくぐったりしていたのである。それではいけぬと反撥して、気を変えてみる手段をいよいよ実行することにした。このほどから客間も自由に使えるようになったので、床《とこ》の壁に青木の絵をかけるというだけの仕事である。それを億劫《おっくう》がって躊躇《ちゅうちょ》していたのを、今日はもはや猶予もせずに、直ちに老刀自《ろうとじ》を呼んで相談して、娘にいいつけて、
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