新しき聲
蒲原有明
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)盛《さか》へ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)幾多|相踵《あひつ》いで
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「執/れんが」、399−上−7]
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(一)
同時代に生れ出た詩集の、一は盛《さか》へ他は忘れ去られた。「若菜集」と「抒情詩」。「若菜集」は忽ちにして版を重ねたが、「抒情詩」は花の如く開いて音もなく落ちて了つた。
島崎氏の「若菜集」がいかに若々しい姿のうちに烈しい情※[#「執/れんが」、399−上−7]をこめてゐたかは、今更ここに言ふを須《もち》ゐないことではあるが、その撓《たゆ》み易き句法、素直に自由な格調、從つてこれは今迄に類《たぐひ》のなかつた新聲である。予がはじめて「若菜集」を手にしたをりの感情は言ふに言はれぬ歡喜であつた。予が胸は胡蝶の翅《つばさ》の如く顫《ふる》へた。島崎氏の用ゐられた言葉は决して撰《え》り好みをした珍奇の言葉ではな
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