詩は滅びると、さういふ聲が他からも聞える。私はそれをも率直にうべなふものである。今日の詩は當然散文に吸收されて、或る期間の憩ひを樂しむのも惡くはないと思つてゐる。少なくともさういふ方向に從つて詩が滅びつゝあることを私はむしろ冀ふものである。
然し私には詩の將來の爲めに指針を與ふる如き資格は毫もない。私は始めから他家の馬を水中に引入れるだけの魅力も有せぬ、いはば意氣地のない老水虎である。それが責められるとしても、これ以上愚答を述べるのは堪へ難いし、金瘡や接骨の藥法は素より知悉してゐないのであるから、その妙術を惜んで傳へぬのでもない。うつけ者の思案にあたはぬとはこの事であらう。[#地から2字上げ](昭和十二年三月)
底本:「明治文學全集 99 明治文學囘顧録集(二)」筑摩書房
1980(昭和55)年8月20日初版第1刷発行
底本の親本:「飛雲抄」書物展望社
1938(昭和13)年12月10日
初出:「文藝懇話會」
1937(昭和12)年4月
入力:広橋はやみ
校正:川山隆
2007年8月14日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青
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