れずに魂に刻んでゐる。パルナッシャンの套語「無痛感」はどこか「非人情」の禪語に類するものがあり、マアテルリンクの神祕感と共に極めて東洋的である。これ等の詩人の思想がわたくしの觸れ易き心の養ひとなつたこと幾許なりやは量り難い。わたくしの詩にパルナッシャンの影響がありとすれば、それは全く柳村氏の鼓吹によるものである。
自然主義より象徴主義への推移といふことは、評論家によつてあまり唱へられないやうであるが、わたくしは前に述べたとほり、「審美新説」を讀んで感化されたことが先入主となつてゐる故か、この兩主義の關係をさういふ風に密接に考へてよいものと思つてゐる。ロマンチシズムから直ちにシンボリズムには移れぬわけである。この兩主義の推移といふことは例を擧げて見れば、ユイスマンスの一生の經路がこれをよく語つてゐる。この作者には鰊の有名な描寫がある。これなど自然主義的描寫に即する一面の歸結と見て然るべきものである。自然主義はつとめて感傷風の表現の混入を退けた。この事はかの高踏派の非人情とおのづから相通ずるところがある。考察の熱意と描寫の精緻とはこゝに起らざるを得ない。その熱意が幻想に入り、その精緻が滲
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