ゐたのでありますが、それ以外《いがい》にこの時代《じだい》には石《いし》を磨《みが》いてすべ/\した美《うつく》しいものに造《つく》り上《あ》げることをやり出《だ》したのです。また石器《せつき》の形《かたち》も大體《だいたい》は前《まへ》の時代《じだい》よりは小形《こがた》のものが多《おほ》く、しかも石器《せつき》の使《つか》ひ途《みち》によつて種々《しゆ/″\》異《こと》なつた形《かたち》のものがわかれて發達《はつたつ》して來《き》ました。例《たと》へば平《ひら》たく刃《は》が兩方《りようほう》から磨《みが》き出《だ》してゐる石斧《せきふ》、あるひは長《なが》い槍《やり》、あるひは庖丁《ほうちよう》といつたふうに、使用《しよう》に便利《べんり》な種々《しゆ/″\》の形《かたち》が出來《でき》たのであります。そしてそれらが皆《みな》、その後《ご》發達《はつたつ》して今日《こんにち》の金屬《きんぞく》の器物《きぶつ》になつて行《い》つたのです。またこの時代《じだい》の一番《いちばん》大《おほ》きな發明《はつめい》は、弓矢《ゆみや》が始《はじ》めて用《もち》ひられることであります。それは矢《や》の先《さき》につける矢《や》の根《ね》石《いし》があることでわかるのであります。投《な》げ槍《やり》といふようなものは、あるひはありましたかも知《し》れませんが、弓矢《ゆみや》のような飛《と》び道具《どうぐ》は、舊石器時代《きゆうせつきじだい》には見《み》られないもので、實《じつ》に新石器時代《しんせつきじだい》の新式武器《しんしきぶき》であります。この發見《はつけん》はちょうど近代《きんだい》における鐵砲《てつぽう》の發明《はつめい》と同樣《どうよう》、當時《とうじ》の人間《にんげん》が狩獵《しゆりよう》や戰爭《せんそう》の場合《ばあひ》、どれほど便利《べんり》で、またどれほど有效《ゆうこう》であつたかといふことは、今《いま》から想像《そう/″\》されます。たゞ今《いま》述《の》べたところの石器《せつき》は、この棚《たな》に陳列《ちんれつ》してあるように、世界《せかい》の各國《かつこく》から出《で》てゐるのでありますが、その形《かたち》はたいてい皆《みな》よく似《に》たもので、大《たい》した相違《そうい》はありません。(第二十九圖《だいにじゆうくず》)
[#「第二十九圖 ヨーロツパ新石器時代遺物」のキャプション付きの図(fig18371_30.png)入る]
 また、この新石器時代《しんせつきじだい》になつてから、人類《じんるい》の發明《はつめい》した大切《たいせつ》な品物《しなもの》は土器《どき》であります。土器《どき》といひますと粘土《ねんど》で形《かたち》を造《つく》つて、それを火《ひ》で燒《や》いたものであります。もっとも今日《こんにち》のように堅《かた》い燒《や》き物《もの》や、釉藥《うはぐすり》を用《もち》ひた品《しな》は出來《でき》なかつたので、いはゆる素燒《すや》きでありますが、とにかく土器《どき》が發明《はつめい》されてから、人間《にんげん》は生活上《せいかつじよう》に非常《ひじよう》な便利《べんり》を得《え》て來《き》ました。今《いま》まで水《みづ》を汲《く》んだり、それを保存《ほぞん》するには椰子《やし》の實《み》の殼《から》のようなものとか、貝類《かひるい》の殼《から》とかを使《つか》ふことの他《ほか》はなかつたのであります。これらのものは大《おほ》きさも限《かぎ》りがあり、形《かたち》も一定《いつてい》してをりますが、この土器《どき》になりますと、大《おほ》きい容《い》れ物《もの》でも思《おも》ふような形《かたち》のものでも自由《じゆう》に造《つく》ることが出來《でき》ます。それで狩獵《しゆりよう》でとつて來《き》た獸《けだもの》の肉《にく》は、壺《つぼ》の中《なか》に鹽漬《しほづ》けとして保存《ほぞん》されるし、水《みづ》やその他《た》の流動物《りゆうどうぶつ》を瓶《かめ》に入《い》れて、自由《じゆう》に運《はこ》ぶことも出來《でき》るようになりました。また以前《いぜん》水《みづ》を湯《ゆ》に沸《わか》すことは非常《ひじよう》に困難《こんなん》であつて、僅《わづ》かに石《いし》のくぼみへ水《みづ》を入《い》れて、それに燒《や》き石《いし》を投《な》げ込《こ》むとか、貝殼《かひがら》に入《い》れた水《みづ》を火《ひ》に近寄《ちかよ》せて少《すこ》しの湯《ゆ》を得《え》たに過《す》ぎなかつたのでありますが、土器《どき》の發明《はつめい》が出來《でき》てから、多量《たりよう》の湯《ゆ》を沸《わか》すことも出來《でき》るようになつたのであります。定《さだ》めし舊石器時代《きゆうせつきじだい》の人類《じんるい》は、湯《ゆ
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