どにあるものはよく完備《かんび》してをります。動物《どうぶつ》の標本《ひようほん》は皆《みな》、ぱのらま[#「ぱのらま」に傍点]の風景《ふうけい》の中《なか》に、それをあしらつて、自然《しぜん》の景色《けしき》の中《なか》にそれ/″\動物《どうぶつ》が棲《す》んでゐる所《ところ》を見《み》せることに努《つと》めてをりますから、見物人《けんぶつにん》は大人《おとな》でも子供《こども》でも興味《きようみ》をもつてそれ/″\動物《どうぶつ》の生活状態《せいかつじようたい》を知《し》ることが出來《でき》るのです。かような博物館《はくぶつかん》は、アメリカの各州《かくしゆう》に一《ひと》つや二《ふた》つは必《かなら》ず設《まう》けられてあるのは實《じつ》に羨《うらや》ましいと思《おも》ひます。せめて日本《につぽん》にこんなのが一《ひと》つでも設《まう》けられたらと思《おも》はずにはゐられません。またアメリカには大《おほ》きな博物館《はくぶつかん》に附屬《ふぞく》し、また獨立《どくりつ》に兒童博物館《じどうはくぶつかん》といふのがたくさんあります。これは理科《りか》その他《た》に關《かん》して、ごく簡單《かんたん》な知識《ちしき》を授《さづ》けるために出來《でき》たもので、學校《がつこう》で習《なら》ふことを、一々《いち/\》實物《じつぶつ》に照《てら》して復習《ふくしゆう》することが出來《でき》ます。それですからいつも熱心《ねつしん》な男《をとこ》の子《こ》や女《をんな》の子《こ》が一《いつ》ぱいです。これも西洋《せいよう》で羨《うらや》ましいものの一《ひと》つであります。

      (ニ) 世界《せかい》で珍《めづら》しい博物館《はくぶつかん》

[#「第十一圖 ストツクホルム北方博物館」のキャプション付きの図(fig18371_12.png)入る]
 西洋各國《せいようかつこく》にあるいろ/\の博物館《はくぶつかん》の中《うち》で、一風《いつぷう》變《かは》つた特色《とくしよく》があつて非常《ひじよう》に面白《おもしろ》く感《かん》じたのは、ヨーロッパのスエーデン國《こく》のストックホルムにある民俗博物館《みんぞくはくぶつかん》であります。これはスエーデンの土地《とち》の風俗《ふうぞく》や習慣《しゆうかん》などを示《しめ》す博物館《はくぶつかん》であつて、ハゼリウスといふ一人《ひとり》の熱心《ねつしん》な人《ひと》が、古《ふる》い風俗《ふうぞく》や品物《しなもの》がだん/\亡《ほろ》びて行《ゆ》くのを悲《かな》しんで、初《はじ》めはわづかの品物《しなもの》を集《あつ》め出《だ》し、それがだん/\大《おほ》きくなつて行《い》つて今日《こんにち》の國立《こくりつ》の大博物館《だいはくぶつかん》となり、北方博物館《ほつぽうはくぶつかん》といふ名稱《めいしよう》がつけられたのであります。建《た》て物《もの》は三階建《さんがいだ》ての立派《りつぱ》なもので、その一番下《いちばんした》の部屋《へや》にはスエーデンの各地方《かくちほう》の農家《のうか》の状態《じようたい》をそのまゝこゝへ移《うつ》してあつて、寢臺《しんだい》だとか爐邊《ろへん》の模樣《もよう》などが地方々々《ちほう/\》別《べつ》に區別《くべつ》して竝《なら》べてあるのです。また二階《にかい》には家々《いへ/\》の道具類《どうぐるい》が、あるひは織《お》り物《もの》あるひは木器《もくき》あるひは陶器《とうき》といふように種類《しゆるい》をわけて見《み》られるようにしてあります。それから三階《さんがい》へ上《のぼ》ると、今度《こんど》は時代順《じだいじゆん》に竝《なら》べて、だん/\變《かは》つて來《き》てゐるところを現《あらは》してゐます。かように三種《さんしゆ》の竝《なら》べ方《かた》によつて、私共《わたしども》見物人《けんぶつにん》はスエーデンの風俗《ふうぞく》や習慣《しゆうかん》の特質《とくしつ》を十分《じゆうぶん》にいろ/\の方面《ほうめん》から研究《けんきゆう》することが出來《でき》るようになつてをります。ところがまたこの博物館《はくぶつかん》のすぐ傍《そば》にスカンセンといふ丘陵《きゆうりよう》があつて、それが野外博物館《やがいはくぶつかん》になつてをります。その丘《をか》の上《うへ》にはスエーデンの各地方《かくちほう》の植物《しよくぶつ》を移植《いしよく》し、また特有《とくゆう》の動物《どうぶつ》をも飼養《しよう》してゐるところは、ちょっと植物園《しよくぶつえん》か動物園《どうぶつえん》のようでもあります。そしてその間《あひだ》に各地方《かくちほう》からそのまゝもつて來《き》た農民《のうみん》の小屋《こや》があり、古《ふる》い式《しき》の教會堂《きようかいどう》
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