んのうころ」は底本では「びんたつてんのうころ」]までは、少《すこ》し形《かたち》は小《ちひ》さくなりましたけれども、やはり御陵《ごりよう》はみな前方後圓《ぜんぽうこうえん》の塚《つか》でありました。ところが用明天皇《ようめいてんのう》、推古天皇《すいこてんのう》、すなはち聖徳太子《しようとくたいし》の頃《ころ》の天皇《てんのう》から天智天皇頃《てんちてんのうころ》までは、支那《しな》の影響《えいきよう》を受《う》けた四角《しかく》な塚《つか》が御陵《ごりよう》に行《おこな》はれて、まったく樣子《ようす》が變《かは》つて來《き》ました。いま申《まを》した天皇樣《てんのうさま》の御陵《ごりよう》はたいてい大和《やまと》から河内《かはち》などにありますが、天智天皇御陵《てんちてんのうごりよう》は山城《やましろ》の國《くに》京都《きようと》の東《ひがし》の方《ほう》にありまして、四角《しかく》の塚《つか》で上部《じようぶ》が圓《まる》くなつてゐるといふことであります。この天智天皇御陵《てんちてんのうごりよう》にかたどつて、明治天皇《めいじてんのう》、昭憲皇太后《しようけんこうたいごう》[#「昭憲皇太后《しようけんこうたいごう》」は底本では「照憲皇太后《しようけんこうたいごう》」]、大正天皇《たいしようてんのう》の御陵《ごりよう》などもつくられたといふことであります。あなた方《がた》はこの御陵《ごりよう》へは參拜《さんぱい》したことがありませうが、あゝいふ風《ふう》に出來《でき》てをつたのです。
 その後《ご》奈良朝《ならちよう》から平安朝《へいあんちよう》の始《はじ》めの御陵《ごりよう》になりますと、また昔《むかし》にかへって圓《まる》い形《かたち》の塚《つか》になりました。そして佛教《ぶつきよう》が盛《さか》んになつて來《き》てからは御陵《ごりよう》は一《いつ》そう簡單《かんたん》になり、また後《のち》には火葬《かそう》が行《おこな》はれまして、小《ちひ》さな御堂《おどう》や石《いし》の塔《とう》を御陵《ごりよう》に建《た》てることになり、ことに武家《ぶけ》が勢力《せいりよく》を占《し》めるに至《いた》つた時代《じだい》からは、皇室《こうしつ》の御陵《ごりよう》は甚《はなは》だ小《ちひ》さなものになつてしまつたのです。それに引《ひ》きかへて日光《につこう》にある徳川氏《とくがはし》の廟《びよう》があのとほり立派《りつぱ》なのを見《み》て、蒲生君平《がまうくんぺい》などが憤慨《ふんがい》して尊王《そんのう》の念《ねん》を起《おこ》したので、まことにむりのないことであります。それはとにかく、われ/\は日本《につぽん》の古《ふる》い時代《じだい》の御陵《ごりよう》を巡拜《じゆんぱい》すれば、一方《いつぽう》日本《につぽん》[#ルビの「につぽん」は底本では「たつぽん」]の古墳《こふん》の造《つく》り方《かた》の變遷《へんせん》をも知《し》ることが出來《でき》、歴史《れきし》の研究《けんきゆう》にも非常《ひじよう》に役《やく》に立《た》つわけでありますから、私《わたし》は皆《みな》さんがたゞ高《たか》い山《やま》などに登《のぼ》るばかりでなく、遠足《えんそく》のときにはかういふ方面《ほうめん》へも出《で》かけることをおすゝめいたします。

      (ホ) 勾玉《まがたま》などの玉類《たまるい》

 さて話《はなし》は前《まへ》に戻《もど》り古墳《こふん》の中《なか》には、どういふものが埋《うづ》められてゐるかと申《まを》しますと、石棺《せきかん》あるひは石室《せきしつ》の中《なか》、死體《したい》を收《をさ》めてあつた所《ところ》、しかももっともその體《からだ》に近《ちか》いところにあるものはその人《ひと》の身《み》につけてあつた著物《きもの》と飾《かざ》り物《もの》とであります。しかし著物《きもの》はみな腐《くさ》つてしまつて殘《のこ》つてをりませんが、飾《かざ》り物《もの》の中《うち》で一番《いちばん》眼《め》に立《た》つのは、まづ勾玉《まがたま》その他《た》の玉類《たまるい》であります。これはたいてい堅《かた》い石《いし》かがらす[#「がらす」に傍点]で造《つく》つてあるので、その色《いろ》もかはらず完全《かんぜん》に保存《ほぞん》せられてをり、それで發掘《はつくつ》されたとき、誰《たれ》にでもすぐに目《め》につき發見《はつけん》されやすいのであります。
 これらの玉類《たまるい》は、もとは結《むす》びつらねて、頸《くび》から胸《むね》あるひは手頸《てくび》、脚頸《あしくび》など[#「など」は底本では「なと」]にめぐらしたものであることは、埴輪人形《はにわにんぎよう》に現《あらは》されてゐるのを見《み》てもわかります。
 さて玉類《
前へ 次へ
全73ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜田 青陵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング