》の形《かたち》にも似《に》てゐますので、罐子塚《かんすづか》だとか、茶臼塚《ちやうすづか》とか、車塚《くるまづか》だとか、いろ/\の名《な》がついてをりますが、私共《わたしども》は前方後圓《ぜんぽうこうえん》の塚《つか》と呼《よ》んでをります。それは前《まへ》が四角《しかく》で後《うしろ》が圓《まる》いといふ意味《いみ》であります。この塚《つか》の模型《もけい》は特《とく》に置《お》いてありますから、それを御覽《ごらん》になるとよくわかります。またその後《うしろ》の圓《まる》いところと、前《まへ》の四角《しかく》なところとのつなぎめのところの兩側《りようがは》に、小《ちひ》さい圓《まる》い丘《をか》がついてゐることがあります。それがいかにも車《くるま》の兩輪《りようりん》に似《に》てゐますから、昔《むかし》の人《ひと》が車塚《くるまづか》といつたのは面白《おもしろ》い見《み》かただと思《おも》ひます。もっともこの形《かたち》の古墳《こふん》は、昔《むかし》でも偉《えら》い人《ひと》を葬《はうむ》るために造《つく》つたものでありまして、天皇樣《てんのうさま》だとか、皇族《こうぞく》の方々《かた/″\》の御墓《おはか》に多《おほ》く用《もち》ひたのでありまして、下々《しも/″\》のものはやはり、圓《まる》い塚《つか》を用《もち》ひたのであります。その大《おほ》きいものになりますと、周圍《しゆうい》が十町以上《じつちよういじよう》のものもあり、外側《そとがは》に、たいてい堀《ほり》をめぐらしてあります。この形《かたち》の塚《つか》は日本《にほん》に近《ちか》い朝鮮《ちようせん》や支那《しな》においても、けっして見《み》ることの出來《でき》ない、實《じつ》に日本獨特《につぽんどくとく》のものといつてよろしい。しかし、どうしてかような形《かたち》の塚《つか》が出來《でき》たかといふことについては、種々《しゆ/″\》議論《ぎろん》もありますが、どうもはつきりはわかりません。(第五十一圖《だいごじゆういちず》下《した》)
また一方《いつぽう》には古《ふる》くからある圓《まる》い塚《つか》から、だん/\變化《へんか》して四角《しかく》な形《かたち》の古墳《こふん》も出來《でき》て來《き》ましたが、この四角《しかく》の形《かたち》の塚《つか》は、支那《しな》では古《ふる》く秦《しん》や漢《かん》の時代《じだい》から天子《てんし》の墓《はか》などにあつたもので、それを日本《につぽん》が支那《しな》と交通《こうつう》を始《はじ》めてから後《のち》にまねたものが多《おほ》いようであります。そして天皇《てんのう》の御陵《ごりよう》などにこの四角《しかく》の形《かたち》のお墓《はか》が造《つく》られるようになりました。それですから日本《につぽん》の古《ふる》い墓《はか》の形《かたち》は、まづ圓《まる》いのと四角《しかく》なのと、前方後圓《ぜんぽうこうえん》なのとの三通《みとほ》りといふことが出來《でき》ます。その中《うち》最《もつと》も古《ふる》くからあつたのは圓塚《まるづか》、その次《つ》ぎに出來《でき》たのが前方後圓《ぜんぽうこうえん》、それから最後《さいご》に流行《りゆうこう》して來《き》たのは四角塚《しかくづか》でありますが、この前方後圓《ぜんぽうこうえん》と四角《しかく》な形《かたち》はやがて廢《すた》れてしまつて、奈良朝時代《ならちようじだい》からは、普通《ふつう》の圓塚《まるづか》が專《もつぱ》ら行《おこな》はれるようになりました。
さて今《いま》申《まを》したいろ/\の形《かたち》の古墳《こふん》は、今日《こんにち》遺《のこ》つてゐるものには、たいてい松《まつ》の木《き》や他《た》の樹木《じゆもく》が生《は》え繁《しげ》つて、遠方《えんぽう》から眺《なが》めると、こんもりした森《もり》のように見《み》えるのですが、昔《むかし》はそんなに樹木《じゆもく》が生《は》えてゐたわけでなく、たいていそれらの塚《つか》の上《うへ》には、圓《まる》い磧石《かはらいし》を載《の》せて、全體《ぜんたい》を蔽《おほ》うてをつたものでありました。ちょうど今日《こんにち》、明治天皇《めいじてんのう》や大正天皇《たいしようてんのう》の御陵《ごりよう》において拜《をが》めるように、樹木《じゆもく》が生《は》えないようにしてあつたのです。それが年月《としつき》を經《へ》るに從《したが》つて石《いし》が崩《くづ》れたり、その中《なか》に木《き》の種《たね》が落《お》ちて芽《め》を出《だ》したりして、塚《つか》の上《うへ》に樹木《じゆもく》が茂《しげ》つて來《き》たのであります。もっとも墓《はか》の周圍《しゆうい》などには、昔《むかし》はおまゐりする時《とき》に、お
前へ
次へ
全73ページ中47ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜田 青陵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング