ですし、赤貝《あかゞひ》でも線《せん》の數《かず》が少《すこ》し變《かは》つてゐるといふようなことが、貝塚《かひづか》の貝殼《かひがら》を調《しら》べて見《み》ればわかります。また貝塚《かひづか》から發見《はつけん》された貝《かひ》で、今日《こんにち》もはやその近海《きんかい》にゐなくなつたものもありますが、これらの研究《けんきゆう》は考古學《こうこがく》の範圍《はんい》ではなく、動物學者《どうぶつがくしや》または貝類學者《かひるいがくしや》の研究《けんきゆう》に屬《ぞく》するのでありますが、皆《みな》さんが貝塚《かひづか》に出《で》かけたならば、種々《しゆ/″\》異《ことな》つた種類《しゆるい》の貝殼《かひがら》を採集《さいしゆう》して來《く》る必要《ひつよう》のあることを忘《わす》れてはなりません。
それから貝塚《かひづか》の次《つ》ぎには、貝殼《かひがら》は見當《みあた》らぬけれどもやはり人間《にんげん》の住居《じゆうきよ》した跡《あと》と見《み》えて石器《せつき》やその他《た》の遺物《いぶつ》が土中《どちゆう》に挾《はさ》まつてゐる所《ところ》がありまするし、またそれをその後《ご》百姓《ひやくしよう》が掘《ほ》り返《かへ》し、田畑《たはた》の表面《ひようめん》に石器《せつき》や土器《どき》の散亂《さんらん》してゐる所《ところ》があります。皆《みな》さんが、もしさういふ所《ところ》へ行《い》つたならば、石《いし》の斧《をの》や石《いし》の矢《や》の根《ね》などの落《お》ちてゐるのを拾《ひろ》ふことが出來《でき》るのでありますが、昔《むかし》はたくさんにありましたけれど、近頃《ちかごろ》は百姓達《ひやくしようたち》も石器《せつき》であることを知《し》るようになり、自分《じぶん》で拾《ひろ》ひ取《と》つてしまひますし、またそれを集《あつ》めに行《ゆ》く人《ひと》も多《おほ》くなつたので、容易《ようい》に拾《ひろ》ふことが出來《でき》なくなりました。この貝塚《かひづか》の附近《ふきん》だとか、石器時代《せつきじだい》の人《ひと》が棲《す》んでゐた跡《あと》を發掘《はつくつ》する時《とき》は、をり/\石《いし》でもつて取《と》り圍《かこ》んだ爐《ろ》の跡《あと》だとか、または小屋《こや》を建《た》てた時《とき》の柱《はしら》を植《う》ゑ込《こ》んだ跡《あと》だとかゞ圓《まる》く竝《なら》んでゐることがあります。しかしその小屋《こや》の柱《はしら》だとか屋根《やね》などは朽《く》ちやすいもので造《つく》つてあつたから、今日《こんにち》ではまったく遺《のこ》つてゐません。それらは今日《こんにち》でも田舍《ゐなか》において見《み》かけます物置《ものお》きとか、肥料入《ひりようい》れの納家《なや》のような簡單《かんたん》な小屋《こや》がありますが、まあ、それと大《たい》した相違《そうい》のない程度《ていど》のものと思《おも》はれます。
ヨーロッパでは舊石器時代《きゆうせつきじだい》に氣候《きこう》が非常《ひじよう》に寒《さむ》かつたので、洞穴《ほらあな》の中《なか》に人間《にんげん》が棲《す》んでゐたことがありました。日本《につぽん》でも新石器時代《しんせつきじだい》に棲《す》むのに適當《てきとう》な洞穴《ほらあな》のあるところでは、やはりその中《なか》に住居《じゆうきよ》したことがないではありません。例《たと》へば越中《えつちゆう》氷見《ひみ》の大洞穴《だいどうけつ》の中《なか》には、今《いま》は小《ちひ》さい社《やしろ》が祀《まつ》られてありますが、その穴《あな》の中《なか》から石器時代《せつきじだい》の遺物《いぶつ》がたくさんに出《で》て來《き》ました。その他《ほか》にも各地《かくち》でかような洞穴《ほらあな》は發見《はつけん》されましたが、山腹《さんぷく》に當《あた》つて二三尺《にさんじやく》ぐらゐの穴《あな》が竝《なら》んで設《まう》けられてゐるいはゆる横穴《よこあな》といふもの、これは石器時代《せつきじだい》のものでなく、もっと後《のち》の時代《じだい》の墓《はか》でありますから、これは後《のち》にお話《はなし》をすることにいたします。
しかし石器時代《せつきじだい》の人間《にんげん》もお墓《はか》を造《つく》りました。たゞそれは今《いま》申《まを》しました横穴《よこあな》でもなく、また高《たか》い塚山《つかやま》を築《きづ》くのでもなく、普通《ふつう》は貝塚《かひづか》のある所《ところ》、あるひは人間《にんげん》の住居《じゆうきよ》の附近《ふきん》に、土地《とち》を二三尺《にさんじやく》掘《ほ》つてそこに死體《したい》を埋《うづ》めて置《お》いたのです。そして墓標《ぼひよう》のようなものを造《つく》つたかも知《し》れ
前へ
次へ
全73ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜田 青陵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング