きな榕樹の下に滾々と湧出る嘉手志川の源である清泉に、衣洗ふ村娘を眺めながら高嶺村大里の村に入る。こゝは源爲朝が島の運天に上陸して後南遷し、大里按司の女と婚して舜天を生ましめたと云ふ大里村である。この村にノロさんの家が二軒ある。先づ一方の家では如何にも神祕的且つ幽鬱な六十過ぎのノロさんが出て來て、刳拔きの長い大刀箱や、糸目錢などを見せてもらつたが勾玉は傳へて居ない。島袋君がいろ/\と琉球語で質問せられると、「ウーウー」と應へるので、何と云ふ意味かと聞くと「イエス」といふことだとある。それでは「ノウ」はと尋ねると、殆んど同じ「ウウー」であつて唯だ語尾を揚げるのであるとは如何にも面白い。併し私達も「ウー」「ウウン」の兩語を同じ意味に使ひ、之に頭を竪横に動かす運動を添へて、エンフワサイズしてゐることを思ひ出した。
 今一軒のノロの家(西銘ノロ)は美しい芝生の上に殿を作り、庭園なども非常にキレイであり、ノロさんの老婆も頗る快活且つ近代的である。黒砂糖の塊を茶ウケに出され、又々水晶の珠數玉と、一箇の稍古い暗緑色の勾玉を藏してゐる。案内の校長さんから黒砂糖を紙に包んで頂戴し、子供の時喜んで食べたこと
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