名から起つた地名であるとかと云はれてゐるが、私の一見した處ではそんな事はないらしい。漁村のことゝて男は海上に魚取りに出で、女は之を頭上にのせて那覇へ賣りに行きなどして、女も非常に活動する處から、體格も自然に佳いといふ位で、また店に坐つてゐる主婦などに肥え太つた女が多いのは、運動と食物の關係であるかも知れない。魚市場で商賣してゐるのも皆な女であつて、亭主が漁して來た魚を女房や娘が値切りこぎつて買ひ、之に自分が利得を取つて賣り、家族の面々財産を別にしてゐるといふ、日本には珍らしい個人主義的財産制度を持つてゐるので、先年某博士が調べに來られ、それ以來有名になつてゐるとのことである。
 併し勿論こんな財産制度の事などはさつきの人種の問題とは違ひ、往來を歩きながら糸滿人の顏をながめた丈けでは分かるものではないので、皆な博識な島袋君の御話の受賣りである。そこで私達は海岸へ行つて、濱邊に引上げてあるウツロ舟を見たり、血なまぐさい魚市場の内を歩いて魚類を見たりしてから、近傍の漁師の家に這入つて、刳木の水アカすくひを買つたりしてから、少し山の手にあるノロ(巫女)さんの家を訪ねることにした。これは沖繩へ來
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