原爆詩集
峠三吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)圧《お》しつぶされた暗闇の底で
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一枚|宛《ずつ》ほどき
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#改丁]
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――一九四五年八月六日、広島に、九日、長崎に投下された原子爆弾によって命を奪われた人、また現在にいたるまで死の恐怖と苦痛にさいなまれつつある人、そして生きている限り憂悶と悲しみを消すよしもない人、さらに全世界の原子爆弾を憎悪する人々に捧ぐ。
[#改丁]
序
ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ
[#改ページ]
八月六日
あの閃光が忘れえようか
瞬時に街頭の三万は消え
圧《お》しつぶされた暗闇の底で
五万の悲鳴は絶え
渦巻くきいろい煙がうすれると
ビルディングは裂《さ》け、橋は崩《くず》れ
満員電車はそのまま焦《こ》げ
涯しない瓦礫《がれき》と燃えさしの
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