の日から、私は死にたいという衝動的な欲望が連続して頭の中をからまわりした。私は学校をずっと休んだ。国語の教師や、友達が見舞いに来た。私は、死にます、と云った。彼女等は冗談でしょう、と云った。私も苦笑した。死ぬ手段を考慮しておらなかった。私は首をくくろうと思った。「にんじん」の一場面が頭に浮んだ。私は、二三日後、それをこころみた。然し死ねなかった。私の行動に気付いた肉親達は私を警戒した。説諭もうけた。親は、自分達が苦労して育てたということをくりかえしくりかえし云った。そのことが私を余計腹立しくさせた。私は、しかし、死ぬ死ぬと云ったまま一週間死なないでいた。私は死ぬことも出来ないのだった。死ねば、死体がのこるだけだと思っていたけれども、唯、死ぬ方法が見当らなかったのだ。
私の手許に、生きて下さい、という手紙がたくさん舞いこんだ。田舎へ帰ってしまっていた前の国語の教師からも、
――私は何もあなたを慰め、あなたを説き伏せることは出来ない。でも、どうか、生きていて下さい。生きていて下さい。――
と云って来た。友達からは、
――あなたが死んでしまったということを想像した時、私はもう泣く涙さえない
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