りにスモックがたくさんしてあったようだった。私は母に、あれと同じものをこしらえてと何度も頼み、やっとこしらえてもらってそれを着たら、アリーのようになれるという想像をすっかりぶちこわし、鏡の前で着たっきり二度と手を通さなかった。アリーは色が白く、うぶ毛が密生していて、目が青かった。私はまゆ毛も、目も、顔色もくろかった。そうして、すんなりした長い脚のアリーに比べて、私はずんぐり太っちょだった。
「ゴキゲンヨウ」
アリーのこの挨拶が又、母を喜ばせた。母は度々およびするようにと私によく云った。私はアリーの皮膚が好きだった。それはあのカザリイン先生と同じ系統でありながら、年寄と子供では日本人以上に大へんな違いがあることを知った。何となく柔い感じで、手をつないでいたり、肩をくんで歩いたりする時、私は胸をときめかした。私は、アリーを一度裸にしてみたいと思った。しかし、私はもう命令する勇気がなかった。
十二月にはいると毎年の例で私はピアノの会に出た。優しい先生は四十人位の御弟子を持っていた。私と姉とが最も古参で、ダイヤベリイとかいう曲を――これは作曲家の名前かもしれない――二人最後に連弾した。それ
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