。然し絶対的な権利は父にあった。焼けのこった倉庫にある品物はこっそり持出された。決して売ったのだとは云わない。運ばれて行ったのだ、と父は云う。そうこうするうちに、住んでいる家も売る状態になり、同じ市中の親類と同居するようになった。
「どうも戦後移った家は不便でしてね、それに同居の方が何かと都合いいし、ここは又、街へ出るにも歩いてゆけて……」
父の人への挨拶はきいていて苦笑せざるを得なかった。
売るものはつきた。もうこれも売ってしまったのだから。品数が減ってゆく度に、そう云いながら、三度の食事はあたり前にとれる状態を保持することは出来ていた。
戦時中と戦争後の数カ月を共にした父の妹の家族と、それに祖母をまじえた生活がはじまった。私の精神と同じように、終止符をうってしまった家族の生活であった。
もう一カ月後はわからない。本当にどうなっているかわからない。目の前の庭の部分も人手にわたっていたし、唯一の家宝であった掛軸も御出馬なさった。しかし、各自に各自の焦燥を抱いている筈であるのに、それは行動には現われないで表面は至極静かになっていた。父と子供達の意見のはき合いは駄弁にすぎないことに
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