とまで偽らねばならないのであったろうか。殊更周囲の誤解を招くようなことを自分から強いてみせつけるなどは、自分自身全く常識で判断しかねた。私は白い敷布と、枕下のガーベラ(これはあの未亡人の御見舞いだということを母からきいた)と自分の体とがまるで不調和のように感じた。
 数日後思ったのである。あの日、私が未亡人の家へ行きさえしなければ、又、電話さえかからねば――未亡人からの電話であった。――家中の人が翌朝まで私のことに気付かなかったに違いない。そうすれば私は死んでいたかも知れない。別に慄然としたわけではない。唯、こういう運命的な出来事がひどく滑稽に思われた。自殺することは、今までのあらゆる抵抗の最もちぢめられたしかも最も大きなものである筈なのに、抵抗する力を失ってよくも生への抵抗を試みたものだと自分で苦笑した。筆と硯を持ってこさし、ちり紙の上にいたずら書を始めたのはその又翌日であった。私は無感動であった。おめおめ生きかえった自分に恥辱を感じなかったし、こんな事件を起して申訳ないという殊勝な気持も起らなかった。空虚は、その事件前よりかなり私の心を占めていた。でたら目な文章を大きな文字で天井を
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