か重大だったのです。自動車にのって、大阪まで結局もどることになったのですが、その車中で、こんな気持のまま帰れないと私は云いました。彼は帰れとか、帰るなとか、随分の酒量でしたから、何かかんかその時その時の言葉をはきつづけました。自動車を降りてからも、私達はまるでいさかいをしているようだったのです。私が、家へ今夜かえらぬの電報を打つと云いますと、電報なんて打たないで、帰らないで居れと云うのです。そして、私が黙ってますと、俺があと責任もってやればいいんだろ、と云いました。私は、責任とかいうものを、お互に意識することをとてもいやに思っておりました。恋愛に、義務や責任などないんですもの。小母様。私自身、事務的な対人関係や仕事のことでは、とても、責任感が強いのです。でも恋愛で責任のとり合いなんか、私はしたことがない。責任だと感じるなど、それは恋愛だと思いません。私達はホテルのあるあたりを随分うろうろ云い合いをつづけたまま歩きました。結局、私に帰ることを彼はすすめました。私もうなずきました。駅に出て、私は切符を買いました。それから又、喫茶店へゆきました。彼は、ひどくよっぱらっています。そして、巡査と
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