、鉄路のほとりに会いたい気持で一ぱい、大事な仕事が山積のようにあるのにかかわらず、大阪へ行ったのです。よく行く喫茶店へゆきました。彼が居そうな気がしたんです。ドアを押しました。鉄路のほとりは、女の人と一しょに話をしてたんです。私は途端に、かあっとなった。今から考えると私は実にあわて者。だけど、すぐそうなるの。それがたとえ、彼の妹であろうとも。私は会釈をかろうじてした。知ってる喫茶店の女の子が、何その風呂敷? と私にきいた時、たいこ、とこたえる声が自分でかすれてるのを知りました。はなれたコンパートメントにこしかけて、私は煙草に火をつけて、胸の中でガタガタ鳴っているものを落ちつかせようと努力しました。しばらくして、――その間、私は鉄路のほとりの方を、ちっともみなかった――鉄路のほとりは私の傍へ来ました。五時に来るからまってて、と彼は云いました。私はうなずいた。だけど待つ気はなかったのです。ドアのきしむ音、二人の足音がもつれ合って出て行く。私は、コーヒーをのみ、気持をおちつかせました。私の次の行為、緑の島へ電話をしたのです。全く、衝動的に受話器をとりあげたのです。緑の島は居合せました。私はお
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