私の心は穏やかではなかった。ざわついていて、神経がぴりぴりしてて、いつも空虚のようで、いや又反対に一ぱいにつまりすぎている心。恋愛のことの他に、仕事が出来ない。書けない。家庭のこと。そんなことも余計に神経をぴりぴりさせた原因にもなるでしょうが、とにかく一刻として落ちつきがなく、日常には、義務的な仕事が多く。というのは、私の芝居が上演されることになったんです。間近にせまっている。その芝居の音楽を作曲し、弟にトランペットをふかすこと、太鼓のアレンジ。切符のこと、税務署に文句をつけられたり。朝から五六本も電話がかかる。新聞のコントたのまれる。この二月に描いた、唐津での陶器がおくられ、その代金を書留で送ったところ、郵便局の手ちがいで、何度も念を押しにいったり、私は、実にオーヴァーワーク。疲れてるから、ますます神経が鋭敏になり、いらいらする。
さて、舞台稽古の日になった。十二月の十二日。私は、太鼓をかりに、知人のところへ行き、太鼓をかりた。小母さんのところにも寄ったんだっけ。かすりの着物をきてた時よ。私の描いた帯しめて。御影の駅で、木綿の大きな風呂敷に太鼓をつつみ、それをもって、その時、私は
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