す。ああ、その告白をきいた時、私は身ぶるいをした位です。このことは、世界中に私しきゃ、大佐と私しか知らないことなんだ。だから、やはり、ここに書けない。唯、一人の女性がからんでいる――私の知らない――ということだけをのべましょう。私はその話をきいて、彼が不幸だと思いました。そして、私のような罪深い女――その時すでに、私は、過去の人に対する罪悪感と、新しく恋をした人に対する罪悪感とで、苦しんだのですから、過去の人に一生あなたを愛すると思い、告白し、新しく恋をして彼の愛情にそむいたこと。それを、心の隅にのこされている過去の人へのやはりわずかな愛情を、新しい人へそむいてるみたいな気がして。――と一しょになって、慰め合うことが、いいのじゃないかとも思い直したりしたんです。そのちょっと前に、私が非常に愛しはじめた――その人のことを、鉄路のほとり、と呼びましょう。彼は高架の下のしめった空気がすきなんだから――その人、鉄路のほとり、とのある心の事件があるんです。異人街の道をあるき、別れる時に、彼の過去をきいたのです。勿論、すでに私の過去を彼は知っているんです。誰ということも。鉄路のほとりと、私の過去の
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