終止符が打たれたことを感じた。
 三四日すぎた。蓬莱和子は、招待のことをわざわざ南原杉子の会社まで知せに行った。南原杉子は、愛想のいい蓬莱和子に対して、仕方なくほほえんだ。
「夫はね、あなたにふられてしょげこんでるのよ、私、あんまりかわいそうだもんで、これからちょっとサーヴィスしてあげるつもりなのよ。御店をうることにしたの。私、本格的に、声楽の勉強をしたいしね。でも、お店やめてもあなたと御つき合いしたいのよ。私の気持、うけいれて下さるわね。あなたに対して私、真実よ。それでね、土曜日に、あなたをおまねきするつもりなの」
 南原杉子は、例の調子の真実らしき表情や言葉に、反撥も疑問もいだかなかった。その上、彼女は、蓬莱和子から憎悪の言葉を浴びたいと思っていたのに、あてがはずれたことにも決して失望しなかった。
 ――蓬莱和子は、どっちみち心理に変化をきたしたのだわ。私の出現の結果、南原杉子と蓬莱建介の関係の結果にちがいないのだわ。もう、この一組の夫婦に、完全に関心をもたなくなったわ。いや、それよりも、阿難が全面的に、南原杉子を掩ってしまったからだわ――
 蓬莱和子は、仁科六郎も招待するものだと
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