関係である。有である。
さて、三人の会見は音楽会評よりはじまった。蓬莱和子の案内したバーである。
「お杉、(いつからか蓬莱和子は斯うよびはじめていた)あなたは感覚のある方だから、音楽を御存知なくても批評でなしに感想おっしゃれますでしょう。きかせて頂けません」
「あら私、さっぱりわかりませんの、でもあなたの御声、素晴しいわね、いい趣味」
蓬莱和子は、他の御弟子の批評を一くさりのべた。仁科六郎も口を出した。南原杉子は、にやにや笑いながらきいていた。
「六ちゃん。真中で何を黙ってるの、両手に花でいいじゃありませんか」
蓬莱和子と、南原杉子は、音楽から遠のいてありふれた流行の話をしていた。
「洋服のことなんか僕わからない」
「あら、ごめんなさい。のけものにして、ねえ、六ちゃん。お杉の黒のスーツどう思う? ちっとも似合わないわね。お杉は、明るい色彩の方が似合ってよ」
南原杉子は、黒がきこなしにくいものであることも、美人にしか似合わないことも承知している。しかし、二三日前、仁科六郎は、ひどく南原杉子のいでたちをほめたのである。
「僕はからきし色合のことわからないんだ」
「お杉が黒をきると
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