易《か》える者がある。」
王成は鶉を嚢《ふくろ》に入れて帰ろうとした。すると王が呼びかえした。
「鶉売り来い、鶉売り来い。それでは六百両取らそう。承知なら売っていけ、厭ならやめるまでじゃ。」
王成はまた主人の方を見た。主人はまだ自若としていた。王成の望みは満ちあふれるほどであった。王成は早く返事をしないと機会を失って大金をもうけそこなうと思ったので、
「これ位の金で売るのは、まことに苦しゅうございますが、この話がこわれるようなことがありますと、罪を獲《う》ることになりますから、しかたがありません。大王の仰せのままにいたしましょう。」
といって売ることにした。王は喜んで金を秤《はか》って王成に渡した。王成はそれを嚢に入れて礼をいってから外へ出た。外へ出ると主人がうらんでいった。
「わっちがあれほどいってあるじゃないか。なぜ売り急ぎをするのです。もうすこしふんばってるなら八百両になったのですぜ。」
王成は旅館へ帰ると金を案《つくえ》の上へほうりだして、主人に思うだけ取れといったが主人は取らないで、食料だけの金を計算して取った。
王成はそこで旅装を整えて帰り、家に着いてそれまでの経
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