てみると、もういなかったのだ。皆がそれが怪しいことをしてたろうといったのだよ。その後十日あまりして、また入っていってためしたが、ひっそりしてもう何もなかったよ。それからまた一年あまりしてから、やっと人がいるようになったのだよ。」
 山はますます不思議に思って、家へ帰って両親にそっと話し、どうも阿繊は人であるまいと思って、三郎のために心配したが、三郎は初めとすこしもかわらずに阿繊を愛した。
 暫《しばら》くして家の中の人の心がちぐはぐになって阿繊をうたがいだした。阿繊はかすかにそれを察して、夜、三郎に話した。
「私は、あなたの所へまいりましてから、数年になりますが、まだ一度だって悪いことをしたことがありませんのに、この頃は人並に待遇せられません。どうか私に離縁状をください。そして、あなたは自分で良い奥さんをおもらいなさい。」
 そういって阿繊は泣いた。三郎はいった。
「私の気持ちは、お前がよく知ってくれているはずだ。お前が家へ来てくれてから、家は日増に繁昌して来た。皆これはお前が福を持って来てくれたものだといって喜んでいる。だれがお前のことを悪くいうものか。」
 阿繊はいった。
「あなた
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