ますから。」
 玉はそこで馬からおりて一緒に歩いて帰った。女は途みち自分でいった。
「私は幼な名を阿英《あえい》というのです。家には兄弟もありません。ただ外姉《いとこ》の秦が同居しているばかりです。」
 玉はそこで彼の夜の美しい女のいったのは、この女であろうと思った。そして※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]と結婚さした。そこで玉はそのことをその家へ通知しようとした。阿英は固くそれを止めた。玉は心で弟が佳い婦人を得たことを喜んだが、しかし、軽卒なことをしては世間の物議《ぶつぎ》を招く恐れがあるので、それについては心配もしていた。
 阿英は矜《つつし》み深くて、身をきちんとしていた。そしてものをいうには、あまえるようなやわらかな言葉づかいをした。その阿英は嫂に母のように事《つか》えた。嫂《あによめ》もまた阿英をひどく可愛がった。
 中秋明月の夜が来た。※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]夫妻は自分の室で酒を飲んでいた。嫂のよこした婢《じょちゅう》が阿英を呼びに来た。※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]は阿英をやるのが厭であったからおもしろくなかった。阿英は婢を先に帰して
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