思うと、死んでいるかもしれないなんていう考えはてんで起こらなかった」
 こう何事につけても悪いはうばかり見るのは、この暗い部屋《へや》のせいにちがいなかった。
「それから」とマチアはとび上がって、両うでをふり上げながら言った。「バルブレンのおっかあが死んで、あのこわいバルブレンのほうが生きていて、そこへぼくたちが行ったら、きっと雌牛《めうし》を取り上げて自分のものにしてしまうだろう」
 午後おそくなって、ドアが開かれ、白いひげを生やした老紳士《ろうしんし》が拘留所《こうりゅうしょ》にはいって来た。
「こら悪党《あくとう》ども、このかたに答えするのだぞ」といっしょについて来た典獄《てんごく》が言った。
「それでよろしい」と紳士《しんし》は言った。この人は検事《けんじ》であった。「わしは自分でこの子を尋問《じんもん》する」
 こう言ってかれは指でわたしをさし示《しめ》した。
「きみはもう一人の子を預《あず》かっていてもらいたい。そのほうはあとで調べるから」
 わたしは検事《けんじ》と二人になった。じっとわたしの顔を見つめながらかれは、わたしが雌牛《めうし》をぬすんだとがで告発《こくはつ》さ
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