言して、わたしたちの運命《うんめい》を決めることになった。それからかの女は監獄《かんごく》へ行って、お父さんの意見も聞いた。そんなことに一週間かかって、最後《さいご》にわたしたちを集めて、取り決めた次第を言って聞かした。
 リーズはモルヴァンのかの女のうちへ行って養《やしな》われることになった。アルキシーはセヴェンヌ山のヴァルスで鉱夫《こうふ》を勤《つと》めているおじの所へ行く。バンジャメンはセン・カンテンで植木屋をしているもう一人のおじの所へ行く。そしてエチエネットはシャラント県のエナンデ海岸にいるおばの所へ行くことになった。
 わたしはこういう取り計らいをわきで聞きながら、自分の番になるのを待っていた。ところがカトリーヌおばさんはそれで話をやめてしまって、とうとうわたしのことは話が出ずにしまった。
「ではぼくは……」とわたしは言った。
「だっておまえはこのうちの人ではないもの」
「ぼくはあなたがたのために働《はたら》きます」
「おまえさんはこのうちの人ではないよ」
「わたしがどんなに働《はたら》けるか、アルキシーにでもバンジャメンにでもたずねてください。わたしは仕事が好《す》きです」
「それからスープをこしらえるのもうまいや」
「おばさん、あの子はうちの人です。そうです、うちの人です」という声がほうぼうから起こった。リーズが前へ出て来て、おばさんの前で手を合わせた。それはことばで言う以上《いじょう》の意味を表していた。
「まあまあ、かわいそうに」と、カトリーヌおばさんは言った。「おまえがあの子をいっしょに連《つ》れて行きたがっていることはわかっている。けれど世の中というものはいつも思うようにはならないものなのだよ。おまえはわたしのめいだから、おまえをうちへ連れて行って、おじさんにいやな顔をされても、わたしは『でも親類《しんるい》だから』と言って通してしまうつもりだ。ほかのセン・カンテンのおじさんにしても、ヴァルスのおじさんにしても、エナンデのおばさんにしても、そのとおりだろうよ。やっかいだと思っても、親類なら養《やしな》ってくれるだろう。けれど他人ではそうはゆかない。一つうちの者だけでも、腹《はら》いっぱい食べるだけのパンはむずかしいのだからね」
 わたしはもうなにも言うことがないように思った。かの女の言ったことはもっともすぎることであった。わたしはうちの者では
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