それに、こいつが一時にここを出たという確《たし》かな証拠《しょうこ》があるか」
「わたしが証人《しょうにん》です。わたしはちかいます」とボブがさけんだ。
 巡査《じゅんさ》は肩《かた》をそびやかした。
「まあ子どもが判事《はんじ》の前へ出て、自分で陳述《ちんじゅつ》するがいい」とかれは言った。
 わたしが引かれて行くときに、マチアはわたしの首にうでをかけた。それはあたかも、わたしをだこうとしたもののようであったが、マチアにはほかの考えがあった。
「しっかりしたまえ」とかれはささやいた。「ぼくたちはきみを見捨《みす》てはしないよ」
「カピを見てやってくれたまえ」とわたしはフランス語で言った。けれど巡査《じゅんさ》はことばを知っていた。
「おお、どうして」とかれは言った。「この犬はわしが預《あず》かる。この犬のおかげできさまを見つけたのだ。もう一人もこれで見つかるかもしれない」
 巡査《じゅんさ》に手錠《てじょう》をかわれて、わたしはおおぜいの目の前を通って行かなければならなかった。けれどこの人たちはわたしがまえにつかまったときの、フランスの百姓《ひゃくしょう》のように、はずかしめたりののしったりはしなかった。この人たちはたいてい巡査に敵意《てきい》を持っていた。かれらはジプシー族や浮浪者《ふろうしゃ》であった。どれも宿《やど》なしの浮浪人であった。
 今度|拘引《こういん》された留置場《りゅうちじょう》にはねぎが転《ころ》がしてはなかった。これこそほんとうの牢屋《ろうや》で、窓《まど》には鉄の棒《ぼう》がはめてあって、それを見ただけで、もうどうでもにげ出したいという気を起こさせた。部屋《へや》にはたった一つのこしかけと、ハンモックがあるだけであった。わたしはこしかけにぐったりたおれて、頭を両手にうずめたまま、長いあいだじっとしていた。マチアとボブは、よし、ほかの仲間《なかま》の加勢《かせい》をたのんでも、とてもここからわたしを救《すく》い出すことはできそうもなかった。わたしは立ち上がって窓《まど》の所へ行った。鉄の格子《こうし》はがんじょうで、目が細かかった。かべは三|尺《じゃく》(約一メートル)も厚《あつ》みがあった。下のゆかは大きな石がしきつめてあった。ドアは厚い鉄板をかぶせてあった。どうしてにげるどころではなかった。
 わたしはカピがお寺にいたという事実に対して
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