やわらかなレースや、縫箔《ふいはく》を赤んぼうに着せることができたか」これがもう一つたびたびくり返される質問《しつもん》であった。するとわたしはこちらから逆《ぎゃく》に反問《はんもん》して、わずかにこれに答えることができた。あの人たちにとってわたしが子でないならば、なぜぼくを捜索《そうさく》したか。なぜバルブレンや、グレッス・アンド・ガリーに金をやったか。
 マチアはわたしの反問《はんもん》に返事ができなかったけれども、かれはけっして承服《しょうふく》しようとはしなかった。
「ぼくらは二人でフランスへ帰るのがいいと思う」とかれは勧《すす》めた。
「そんなことができるものか」
「きみは一家といっしょにいるのが義務《ぎむ》だと言うのかい。でもこれがきみの一家だろうか」
 こういうおし問答の結果《けっか》は、一つしかなかった。それはわたしをいままでよりもよけい不幸《ふこう》にしただけであった。疑《うたが》うということはどんなにおそろしいことであろう。でもいくら疑うまいと思ってもわたしは疑った。わたしが自分にはうちがないと思って、あれほど悲しがって泣《な》いていたじぶん、こうしてうちができた今日かえってこれほどの失望《しつぼう》におちいろうとはだれが思ったろう。どうしたらわたしはほんとうのことがわかるだろう。そう考えて、いよいよ胸《むね》にせまってくるとき、わたしは歌を歌って、おどりをおどって、笑《わら》って、しかめっ面《つら》でもするほかはなかった。
 ある日曜日のことであった。父親はきょうは用があるからうちにいろとわたしに言いわたした。かれはマチアだけを一人外へ出した。ほかの者もみんな出て行った。祖父《そふ》だけが一人、二階に残《のこ》っていた。わたしは父親と一時間ばかりいたが、やがてドアをたたく音がして、いつもうちへ父親を訪《たず》ねて来る人とは、まるでちがった紳士《しんし》がはいって来た。かれは五十才ぐらいの年輩《ねんぱい》で、流行の粋《すい》を集めた身なりをしていた。犬のようなまっ白なとんがった歯をして、笑《わら》うときにはそれをかみしめようとでもするようにくちびるをあとへ引っこめた。かれはしじゅうわたしのほうをふり向いてみながら、イギリス語でわたしの父に話しかけた。
 それからしばらくして、かれはほとんどなまりのないフランス語で話し始めた。
「これがきみの話をし
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