いうのであろう。
やがてかれはわたしのすぐそばのわらの上に転《ころ》げて、それはごく静《しず》かにわたしの手をなめ始めた。
わたしもうれしくなって、わらのとこの上に半分起き返って、犬の首を両うでにかかえて、その冷《つめ》たい鼻にキッスした。かれはわずか息のつまったような泣《な》き声《ごえ》を立てたが、やがて手早く前足をわたしの手に預《あず》けて、じつとおとなしくしていた。
わたしはつかれも悲しみも忘《わす》れた。息苦しいのどがからっとして、息がすうすうできるようになった。ああ、わたしはもう一人ではなかった。わたしには友だちがあった。
初舞台《はつぶたい》
そのあくる日は早く出発した。
空は青あおと晴れて、夜中のから風がぬかるみをかわかしてくれた。小鳥が林の中でおもしろそうにさえずっていた。三びきの犬はわたしたちの回りにもつれていた。ときどきカピが後足で立ち上がって、わたしの顔を見ては二、三度|続《つづ》けてほえた。かれの心持ちはわたしにはわかっていた。
「元気を出せ、しっかり、しっかり」
こう言っているのであった。
かれはりこうな犬であった。なんでもわかる
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