って役に立つかどうか、それがよくわかったうえにしないと、つまらないと言った。それでぼうさんが代筆《だいひつ》をして、バルブレンのはいっている慈恵《じけい》病院の司祭《しさい》にあてて、手紙を出すことにした。その返事は二、三日して着いたが、バルブレンのおっかあは来るにはおよばない、だが、ご亭主《ていしゅ》が災難《さいなん》を受けた相手《あいて》にかけ合うについて、入費《にゅうひ》のお金を送ってもらいたいというのであった。
 それからいく日もいく週間もたった。ときおり手紙が届いて、そのたんびにもっと金を送れ金を送れと言って来る。いちばんおしまいには、これまでの手紙よりまたひどくなって、もう金がないなら、雌牛《めうし》のルセットを売っても、ぜひ金をこしらえろと言って来た。
 いなかで百姓《ひゃくしょう》の仲間《なかま》にはいってくらした者でなければ、『雌牛を売れ』というこのことばに、どんなにつらい、悲しい思いがこもっているかわからない。百姓にとって、雌牛のありがたさは、一とおりのものではなかった。いかほどびんぼうでも、家内《かない》が多くても、ともかくも雌牛《めうし》が飼《か》ってあるあいだ
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