ビロードの半ズボンに、チョッキに、ぼうし。
まあバルブレンのおっかあがわたしを見たらどんなにうれしがるだろう。どんなに得意《とくい》になるだろう。
けれども、なるほどくつとビロードがこれから六マイル歩けばもらえるというやくそくはいいが、わたしの足はそんな遠方まで行けそうにもなかった。
わたしたちが出かけたときに青あおと晴れていた空が、いつのまにか黒い雲にかくれて、細かい雨がやがてぽつぽつ落ちて来た。
ヴィタリスはそっくりひつじの毛皮服にくるまっているので、雨もしのげたし、さるのジョリクールも、一しずく雨がかかるとさっそくかくれ家《が》ににげこんだ。けれども犬とわたしはなんにもかぶるものがないので、まもなく骨《ほね》まで通るほどぬれた。でも犬はぬれてもときどきしずくをふり落とすくふうもあったが、わたしはそんなことはできなかった。下着までじくじくにぬれ通って、骨まで冷《ひ》えきっていた。
「おまえ、じきかぜをひくか」と主人は聞いた。
「知りません。かぜをひいた覚《おぼ》えがないから」
「それはたのもしいな。だがこのうえぬれて歩いてもしようがないことだから、少しでも早くこの先の村へ行
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