きゅうじ》ばかりしていた。
「てめえ、腹《はら》は減《へ》らねえのか」
「ええ」
「うん、じゃあすぐとこへはいってねろ。ねたらすぐねつけよ。早くしないとひどいぞ」
 おっかあはわたしに、なにも言わずに言うとおりにしろと目で知らせた。しかしこの警告《けいこく》を待つまでもなかった。わたしはひと言も口答えをしようとは思わなかった。
 たいていのびんぼう人の家がそうであるように、わたしたちの家の台所も、やはり寝部屋《ねべや》をかねていた。炉《ろ》のそばには食事の道具が残《のこ》らずあった。食卓《しょくたく》もパンのはこもなべも食器《しょっき》だなもあった。そうして、部屋《へや》の向こうの角《かど》が寝部屋であった。一方の角にバルブレンのおっかあの大きな寝台《ねだい》があった。その向こうの角のくぼんだおし入れのような所にわたしの寝台があって、赤い模様《もよう》のカーテンがかかっていた。
 わたしは急いでねまきに着かえて、ねどこにもぐりこんだ。けれど、とても目がくっつくものではなかった。わたしはひどくおどかされて、ひじょうにふゆかいであった。
 どうしてこの男がわたしのとっつぁんだろう。ほんとう
前へ 次へ
全320ページ中19ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング