ていたとき、裏庭《うらにわ》でこつこつ人の歩く足音がした。
 せっかくのときにだれがじゃまに来たのだろう。きっとおとなりからまきをもらいに来たのだ。
 わたしはそんなことに気を取られるどころではなかった。ちょうどそのときバルブレンのおっかあが、大きな木のさじをはちに入れて、衣《ころも》を一さじ、おなべの中にあけていたのだもの。
 するとだれかつえでことことドアをたたいた。ばたんと戸が開け放された。
「どなただね」とおっかあはふり向きもしないでたずねた。
 一人の男がぬっとはいって来た。明るい火の光で、わたしはその男が大きなつえを片《かた》わきについているのを見つけた。
「やれやれ、祭りのごちそうか。まあ、やるがいい」とその男はがさつな声で言った。
「おやおやまあ」とバルブレンのおっかあが、あわててさげなべを下に置《お》いてさけんだ。
「まあジェローム、おまえさんだったの」
 そのときおっかあはわたしのうでを引《ひ》っ張《ぱ》って、戸口に立ちはだかったままでいた男の前へ連《つ》れて行った。
「おまえのとっつぁんだよ」


     養父《ようふ》

 おっかあはご亭主《ていしゅ》にだきつ
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