ち》や、揚げ物の油のバターをくれるルセットがいた。
もうルセットもいない、乳《ちち》もない、バターもない、これでは、謝肉祭《しゃにくさい》もなにもないと、わたしはつまらなそうに独《ひと》り言《ごと》を言った。
ところがおっかあはわたしをびっくりさせた。おっかあはいつも人から物を借《か》りることをしない人ではあったが、おとなりへ行って乳《ちち》を一ぱいもらい、もう一けんからバターを一かたまりもらって来て、わたしがお昼ごろうちへ帰って来ると、おっかあは大きな土《ど》なべにパン粉《こ》をあけていた。
「おや、パン粉」とわたしはそばへ寄《よ》って言った。
「ああ、そうだよ」と、おっかあはにっこりしながら答えた。「上等なパン粉だよ、ご覧《らん》、ルミ、いいかおりだろう」
わたしはこのパン粉《こ》をなんにするのか知りたいと思ったが、それをおしてたずねる勇気《ゆうき》がなかった。それにきょうが謝肉祭《しゃにくさい》だということを思い出させて、おっかあをふゆかいにさせたくなかった。
「パン粉《こ》でなにをこさえるのだったけね」とおっかあはわたしの顔を見ながら聞いた。
「パンさ」
「それからほかに
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