ようなかっさいで終わった。かれらは両手をたたいたばかりでなく、足拍子《あしびょうし》をふみ鳴らした。
いよいよ勝負の決まるときが来た。カピはぼうしを口にくわえて、見物の中をどうどうめぐりし始めた。そのあいだわたしは親方の伴奏《ばんそう》でイスパニア舞踏《ぶとう》をおどった。カピは四十フラン集めるであろうか。見物に向かってはありったけのにこやかな態度《たいど》を示しながら、この問題がしじゅうわたしの胸《むね》を打った。
わたしは息が切れていた。けれどカピが帰って来るまではやめないはずであったから、やはりおどり続《つづ》けた。かれはあわてなかった。一|枚《まい》の銀貨《ぎんか》ももらえないとみると、前足を上げてその人のかくしをたたいた。
いよいよかれが帰って来そうにするのを見て、もうやめてもいいかと思ったけれど、親方はやはりもっとやれという目くばせをした。
わたしはおどり続《つづ》けた。そして二足三足カピのそばへ行きかけて、ぼうしがいっぱいになっていないことを見た。どうしていっぱいになるどころではなかった。
親方はやはりみいりの少ないのを見ると、立ち上がって、見物に向かって頭を下げた。
「紳士《しんし》ならびに貴女《きじょ》がた。じまんではございませんが、本夕《ほんせき》はおかげさまをもちまして、番組どおりとどこおりなく演《えん》じ終わりましたとぞんじます。しかしまだろうそくの火も燃《も》えつきませんことゆえ、みなさまのお好《この》みに任《まか》せ、今度は一番てまえが歌を歌ってお聞きに入れようと思います。いずれ一座《いちざ》のカピ丈《じょう》はもう一度おうかがいにつかわしますから、まだご祝儀《しゅうぎ》をいただきませんかたからも、今度はたっぷりいただけますよう、まえもってご用意を願《ねが》いたてまつります」
親方はわたしの先生ではあったが、わたしはまだほんとうにかれの歌うのを開いたことはなかった。いや、少なくともその晩《ばん》歌ったように歌うのを開いたことがなかった。かれは二つの歌を選《えら》んだ。一つはジョセフの物語で、一つはリシャール獅子王《ししおう》の歌であった。
わたしはほんの子どもであったし、歌のじょうずへたを聞き分ける力がなかったが、親方の歌はみょうにわたしを動かした。かれの歌を聞いているうちに、目にはなみだがいっぱいあふれたので、舞台《ぶたい
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