いい場所は見つからなかった。それに花こう岩の中にはいってねむれば、しめっぽい夜風を防《ふせ》ぐたしにもなろうと思った。ここでわたしたちというのは、さるのジョリクールとわたし自身のことを言うので、犬たちは外でねむったところでかぜをひく気づかいもなかった。わたしは自分のからだをだいじにしなければならなかった。わたしのしょっている責任《せきにん》は重かった。わたしが病気になったらわたしたちみんなどうなるだろう。またわたしがジョリクールの看病《かんびょう》をしなければならないようだったら、今度はわたしがどうなるだろう。
わたしたちは石の間にほら穴《あな》のような所を見つけた。そこにはまつ[#「まつ」に傍点]の落ち葉がたまっていた。これで、上には風を防《ふせ》ぐ屋根があり、下にはしいてねるふとんができた。これはひじょうに具合がよかった。足りないのは食べ物ばかりであった。わたしはおなかのすいていることを考えまいと努《つと》めた。ことわざにも言うではないか、『ねむるのは食べるのだ』と。
いよいよ横になるまえに、わたしはカピに張《は》り番《ばん》をたのむと言った。するとこの忠実《ちゅうじつ》な犬はわたしたちといっしょにまつ[#「まつ」に傍点]葉の上でねむろうとはしないで、わたしの野営地《やえいち》の入口に、歩哨《ほしょう》のように横になっていた。わたしはカピが番をしてくれればだれも案内《あんない》なしに近づけないと思ったから、落ち着いてねむることができた。
でもこれだけは心配はなかったが、すぐにはねむりつけなかった。ジョリクールはわたしの上着の中にくるまって、そばでぐっすりねむっていた。ゼルビノとドルスは、わたしの足もとでからだをのばしていた。けれどもわたしの心配はからだのつかれよりも大きかった。
この旅行の第一日は悪かった。あくる日はどんなであろう。わたしは腹《はら》が減《へ》ったし、のどがかわいていた。それでいてたった三スーしか持っていなかった。あしたいくらかでももうけなかったら、どうしてみんなに食べ物を買ってやることができよう。それに口輪《くちわ》はどうしよう。これから歌を歌う許可《きょか》は、いったいどうしたらいいだろう。許《ゆる》してくれるだろうか。さもないとわたしたちはみんな、やぶの中でおなかが減《へ》って死んでしまうだろう。
こういうみじめな、あわれっぽい疑
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