か、ひどい言いぐさだ。わたしはこじきはしなかった。わたしは歌を歌ったまでだ。
五分とたたないうちに、わたしはこの人情《にんじょう》のない、そのくせいやに監視《かんし》の行き届《とど》いている村をはなれた。
犬たちは頭《かしら》を垂《た》れて、すごすごあとからついて来た。きっとつまらない目に会ったことを知っていた。
カピはしじゅうわたしたちの先頭に立って歩いていた。ときどきふり向いては例《れい》のりこうそうな目で、いったいどうしたのですと言いたそうに見えた。ほかのものがかれの位置《いち》に置《お》かれたのだったら、きっとわたしにそれをたずねたであろうけれども、カピはそんな無作法《ぶさほう》をするには、あんまりよくしつけられていた。
かれはふに落ちないのを、いっしょうけんめいがまんしているふうを見せるだけで満足《まんぞく》していた。
ずっと遠くこの村からはなれたとき、わたしは初《はじ》めてかれらに(止まれ)という合図をした。それで三びきの犬はわたしの回りに輪《わ》を作った。そのまん中にはカピがじっとわたしに目をすえていた。
わたしはかれらがわからずにいることを、ここで説明《せつめい》してやらなければならなかった。「わたしたちは興行《こうぎょう》の許可《きょか》を得《え》ていないから、追い出されたのだよ」とわたしは言った。
「へえ、それではどうしましょう」と、カピは首を一ふりふってたずねた。
「だからわたしたちは今夜はどこか野天でねむって、晩飯《ばんめし》なしに歩くのだ」
晩飯《ばんめし》ということばに、みんないちどにほえた。わたしはかれらに三スーの銭《ぜに》を見せた。
「知ってるとおり、わたしの持っているのはこれだけだ。今夜この三スーを使ってしまえば、あしたの朝飯《あさめし》になにも残《のこ》らない。きょうはとにかく少しでも食べたのだから、これはあしたまでとっておくほうがいいようだ」こう言って、わたしは三スーをまたかくしに入れた。
カピとドルスはあきらめたように首を下げた。けれどもそれほどすなおでなかったし、そのうえ大食らいであったゼルビノは、いつまでもぶうぶううなっていた。わたしはこわい目をしてかれを見たが、効《き》き目《め》がなかった。
「カピ、ゼルビノに言ってお聞かせ。あれはわからないようだから」と、わたしは忠実《ちゅうじつ》なカピに言った。
カ
前へ
次へ
全160ページ中80ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング