いました。
「その人形も――その莫迦々々しい人形のお金を払ったのも、私なんだ。」
 セエラは椅子の方に顔を向けて、「最後の人形、最後の人形」と、思わず口の中でいいました。
「最後の人形だって? まったくだよ、この人形は私のものだ。お前の持ってるものは、何もかも私のものなのだよ。」
「じゃア、どうか、そのお人形を持ってらしって下さい。私、そんなもの要りません。」
 セエラが喚いたり怯えたりしたら、ミンチン女史はセエラをもう少しは劬《いたわ》ってやったかもしれません。女史は人を支配して、自分の力を試してみるのが愉快だったのでした。が、セエラの凛とした顔を見、誇《ほこり》のある声を聞くと、自分の力が空しく消えて行ったような気がして、口惜しくなるのでした。
「勿体ぶった様子なんかおしでないよ。もう、お前は宮様《プリンセス》じゃアないのだからね。お前は、もう、ベッキイと同じことさ。自分で働いて、自分の口すぎをしなければならないのだよ。」
 意外にも、セエラの眼には、ふと輝きが――救いのかげが浮んで来ました。
「働かして下さいますの? 働けさえすりゃア、何もそう悲しかアありませんわ。何をさして下さ
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