私はこの際どうすることも出来ません。こんなことになって、お気の毒とは存じておりますが。」
「それで、私にあの娘をおしつけたおつもりなら、大間違いですよ。私は泥棒にあったのだ、欺《だま》されたんだ。あの娘は、おもてに追い出してやるばかりだ。」
バアロウ氏は、平然と戸口に立っていいました。
「私なら、そんなことはしませんな。世間の眼によく見えるはずはありませんからね。この学校に関して悪い評判がたつばかりでしょうからね。それよりもいっそ、あの子を養っておいて、役に立てたらいかがです。なかなか利口な子だから、大きくなりさえすれば、あの子からうんとしぼれますぞ。」
「大きくならないうちにだって、うんとしぼりとってやるから。」
「確かにしぼれるでしょう。では、さようなら。」
バアロウ氏は、皮肉に笑ってお辞儀をしながら、戸を閉めて去りました。ミンチン女史は、しばらく突っ立ったまま、閉された戸を睨んでおりました。男のいったことはほんとうだと、彼女は思いました。もうどうすることも出来ないのです。今まで一番大事な生徒だったセエラは、いきなり乞食娘になってしまったのです。今までセエラのために立てかえたお
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