て、私の手に残されたのだと仰しゃるのですね。」
バアロウ氏は、抜目のない事務家でしたので、もうここらで自分の責任を果してしまった方がいいと思いました。
「乞食として残されたに違いありません。またあなたの手に残されたのにも違いございません。他に身よりというものはないようですからな。」
ミンチン女史は急に歩き出しました。女史は今にも部屋から飛び出して、今たけなわな祝宴《しゅくえん》をやめさせてしまおうと思っているようでした。
「莫迦にしている。あの子は今私の部屋で、私のお金で、御馳走をしているのだ。」
「そりゃアその通りですな。」バアロウ氏は平気でいいました。「我々代理人は、もう何の支払いも出来ませんからな。クルウ大尉は、我々への支払いもせずに死んでしまいました。それも、かなりな額だったのです。」
ミンチン女史は、ますます不機嫌になって、ふり返りました。こんな災難がふりかかろうとは、今の今までは、夢にも思わないことでした。
「私は、あの娘のために、どんなにお金を使ったって、きっと払ってくれることを、信じきっていたのです。あの莫迦々々しい人形の代も、衣裳の代も、皆この私が立てかえておい
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