「セエラは、そのつもりになるためには、顔とか持物とかは、どんなでもかまわないっていうのよ。何を考え、何をするかということが、かんじんなんですって。」
「きっとあの人は、自分が乞食《こじき》であっても、宮様《プリンセス》になれると思ってるんでしょうよ。これから、セエラを『殿下』と呼んでやりましょうか。」
 煖炉《ストーブ》の前で、ラヴィニアがまだしゃべっている所へ、戸が開いて、セエラがロッティと一緒に入って来ました。ロッティはまるで小犬のように、セエラの行く所へはどこにでもついて行くのでした。
「ほら、セエラが来た。またあのいやな子を伴れて。」ラヴィニアは小声でいいました。「そんなに可愛いなら、自分の部屋の中に飼っとけばいいじゃないの。いまにまたきっと吠え出すことよ。」
 ロッティは果して、何程もたたないうちに吠え出しました。セエラはその時、窓のそばでフランス革命の本を、夢中になって読んでいたのでした。で、ロッティの喚き声を聞いて、夢から覚まされた時には、さすがにいやな気持がしました。本の好きな人は、誰でもそうでしょうが、セエラは読書の邪魔をされると、妙に腹が立ってならない性質でした。
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